● 乾癬

乾癬は「皮膚の炎症」と「表皮(皮膚のいちばん外側の層)の新陳代謝の異常」の2つの側面を持つ病気です。
典型的な症状は、皮膚から少し盛り上がった赤い発疹[紅斑(こうはん)]の上に、銀白色のフケのようなもの[鱗屑(りんせつ)]がくっついてポロポロとはがれ落ちます。
乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まって種々の炎症を起こす物質を出しているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。また皮膚の細胞が、正常な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、増殖が過剰な状態になっています。過剰に増殖した細胞により、皮膚は厚く積み上がって盛り上がり、最終的には鱗屑となってはがれ落ちていきます。
「かんせん」という名前から「人から人にうつる」と誤解されやすいのですが、他の人に感染する病気ではありません。




乾癬の種類

乾癬は症状により5つの種類に分けられます。日本には約40万人の患者がいると言われています。

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

乾癬患者全体の約90%が尋常性乾癬です。頭部、肘、膝などこすれやすい部分や刺激を受けやすい部分によく見られ、全身に広がることもあります。乾癬では症状が出ていない皮膚に引っ掻くなどの刺激を与えると、その刺激をきっかけに新たな発疹が現れることがあります。これをケブネル現象といいます。

乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)

皮膚の症状に加えて、乾癬によって関節に炎症が起こった状態を乾癬性関節炎といい、症状は関節リウマチに似ています。

滴状乾癬(てきじょうかんせん)

小さな水滴大の発疹が全身に現れるのが特徴です。小児や若年者に多く、風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎(へんとうせんえん)が誘因となることが多いと言われています。

乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

尋常性乾癬が全身に広がって、全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び、細かい鱗屑がはがれ落ちる状態(紅皮症)を乾癬性紅皮症と呼び、発熱や悪寒、倦怠感などを伴います。

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

発熱、倦怠感を伴い、急激に全身の皮膚が潮紅し、膿疱(膿を持った状態)が多発します。放置すると、全身衰弱などにより重篤な状態になることがあります。


乾癬の治療

乾癬の治療方法は、大きく分けて外用療法・内服療法・光線療法・生物学的製剤の4つの方法があります。
それぞれの特徴は下図のとおりです。


外用療法

主にビタミンD3外用薬、ステロイド外用薬およびこれらの配合外用薬が用いられます。

ビタミンD3外用薬
主に表皮の新陳代謝の異常を抑え、正常な皮膚に導きます。表皮の盛り上がりや鱗屑にとくに効果があります。
一度症状が良くなれば、よい状態を長期間保てますが、効果が出るまでに時間がかかるため、根気良く塗ることが大切です。

ステロイド外用薬
主に炎症を抑えます。特に皮膚の赤みに効果があり、即効性があります。

ビタミンD3とステロイドの配合外用薬
ビタミンD3外用薬とステロイド外用薬の効果を併せもっており、即効性があります。

光線療法

皮疹に紫外線を照射し、免疫の働きを抑えることで乾癬の症状を改善する治療です。

PUVA療法
UVA(長波長紫外線)を照射して治療を行います。

ナローバンドUVB療法
UVB(中波長紫外線)を使用します。治療効果が高く、狭い領域の波長を照射します。

エキシマライト
UVB(中波長紫外線)を使用します。治りにくい部位に対して部分的に照射できます。

内服療法

飲み薬は、塗り薬でも効果が不十分な中等症から重症の乾癬に用いられます。

ビタミンA誘導体(レチノイド)
主に皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えます。

免疫抑制薬(シクロスポリン)
過剰な免疫作用を抑えるお薬です。

PDE4阻害薬(アプレミラスト)
免疫にかかわる細胞に存在する酵素の働きを抑え、過剰に発現している炎症をおこす物質を抑えます。

抗リウマチ薬(MTX)
葉酸の働きを抑え炎症症状を鎮めます。

生物学的製剤

生物学的製剤は、乾癬の症状が出ている部位に、炎症にかかわるたんぱく質(サイトカイン)の働きをピンポイントで抑えて症状を改善します。皮下注射と点滴の種類があります。


乾癬は症状や重症度が人それぞれ異なります。そのため、各治療方法を単独もしくは組み合わせて行っていきます。治療の効果や副作用、ライフスタイルなどにより、治療方法が選ばれます。、乾癬とは上手に付き合っていくことが大切です。



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